タコのつぶやき
僕はタコだ。海に住んでいる。自分の気に入った場所に家を作って住んでいる。
時々、イカさんと比べられて、足が少ない分だけタコは頭が悪いと言われるけれど
そんな事はない。海にたくさんの仲間がいるけど、ちゃんと自分で家を作って
しかも、玄関に石を並べて門まで作っている仲間はそうはいない。
砂に穴を掘って作ったり、土管や缶を利用して作ったり、いろいろ工夫してるんだ。
海にはいろんな者がやってくる。ダイバーというやつもその1つだ。
変な格好をして泡をブクブク吐きながら泳ぐ。でも泳ぎはあまりうまくないみたいだ。
足をバタバタさせて、時々、僕の家の屋根を壊す。
こまったものだ。そのたびに僕は石の壁を並べ直さなくちゃならない。
まあ、不注意で家を壊されるのは、まだガマン出来る。
ひどいのは、手を突っ込んできて、いたずらするやつだ。
僕は、そんな時は吸盤でギュッと吸い付いてあざをつけてやる。
すこしは懲りるだろう。僕の友達の奥さんは、あまりダイバーのいたずらがひどいので
卵を守るために、引越ししなくちゃならかった。そっとしておいて欲しいものである。
泳ぎはヘタなくせにダイバーは知恵が、はたらくみたいだ。
僕に吸盤で吸い付かれないように、僕の頭をつかんで振り回すやつがいる。
あれはカンベンして欲しい。目がまわって気持ちが悪くなる。
ダイバーも一度、自分がやられてみればわかるはずだ。
ひどいやつばかりではないらしい。僕の家の前でじっと、僕とにらめっこしてるだけの人。
カメラを持ってきて、僕の写真を撮る人。あのバシャというのは眩しくてビックリするが
僕の写真が、どこかに飾られるのは悪い気はしない。そんな時は僕は、
得意の体の色の模様替えをやってみせてあげるんだ。きれいに撮ってくれよ。
撮った写真を、僕に見せに来たダイバーはまだいないけど、
もし、そんな事があったら僕の彼女にも見せてあげようと思っている。